ニーズ高まる外国人介護人材
相互理解を深め、ともに輝く社会へ

介護人材教育 部長・介護福祉学科 顧問
一般財団法人
熊本県介護福祉士会副会長
高齢化に伴い介護業界の人材不足は切実な問題となっています。
政府はこの現状を打開しようと外国人介護人材の受け入れを後押しして、高まる介護需要に答えようとしています。実際にどのような外国人が働いているのか、あるいはどのような課題を抱えているのか、国際介護学科で留学生を受け入れている『九州中央リハビリテーション学院』の野島謙一郎介護人材教育部長に話を聞きました。
日本の高い技能を求め、在留資格を得て来日
日本は現在、年間約60万ペースで人口が減っています。生産年齢が減少し高齢化が急速に進んでいる現状からも介護業界での人手不足は深刻です。人手不足を補おうと介護職の処遇の改善や介護ロボットの導入などさまざま対策は進んでいますが、それでも外国からの力を借りなければ解消できない状況です。
外国人が日本で介護職に就くには4つの在留資格があります。図1からわかるように「EPA(経済連携協定)」、「在留資格・介護」、「技能実習」「特定技能1号」とあり、それぞれ受け入れの制度が異なります。
「EPA」は特定の国と経済連携の強化を目的としたもの。日本はインドネシア、フィリピン、ベトナムと協定を結んでいます。国によって異なりますが日本語研修を受けた介護や看護の知識を持った人が対象です。入国後は施設等で4年間働きながら介護福祉士の資格取得を目指し研修を受け、4年目に試験を合格すれば永続的に働くことができます。不合格の場合は帰国となります。
「在留資格・介護」は、日本語を習得している留学生を受け入れ当校のような介護福祉養成校に2年間学び介護福祉士の資格を取得します。こちらも永続的な就労が可能です。養成校を経ず実務経験から介護福祉士の資格を取った人も同等の制度です。
「技能実習」の場合は日本の技能移転を目的とした制度で、最大5年間介護施設等で働きながら実習を経て帰国となります。日本で得た知識や技術を本国で活用する必要があります。実習を経て介護福祉士の資格を取得すれば永続的に働けます。「特定技能1号」は人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れる制度。技能や日本語能力水準を試験等で確認した上で入国が可能となります。介護施設等で最大5年間働くことができその後は帰国。ただし、介護福祉士の資格を取得すれば在留資格・介護に移行して永続的に働けます。技能実習生が実習を経て、特定技能1号に移行すればさらに5年間働くことも可能です。
熊本県内の外国人介護人材について県内の在留資格別外国人の人数(R2~R6)
出典:出入国在留管理庁
「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表」
「特定技能在留外国人数の公表等」
熊本県の国籍別在留外国人者数(令和6年10月末現在)
※熊本労働局「外国人雇用状況」の届出状況集計結果より引用※上記は介護職のみの数ではない
言葉や文化の違いからくる壁。受け入れる側も対策を
『九州中央リハビリテーション学院』の国際介護学科で学ぶ留学生
外国人介護人材での課題は言葉の問題です。日本語が話せないと意思疎通が難しく、日本語で実施される介護福祉士の国家試験も大変厳しくなります。来日時は、日本語に慣れていなく戸惑う方がほとんどです。外国人材を受け入れる施設側は、それぞれの趣旨に沿った日本語教育や技能教育等が必要となります。県内初の取り組みとして2024年から直接熊本県へ入国し日本語学校と介護福祉学科で勉強し「介護福祉士を取得するコース」を実施しました。明確な介護福祉士取得という目的意識を持った生徒たちが学んでいます。また経済的負担を軽くし勉強に集中できるように、法人奨学金制度を導入しています。
もう一つ課題となっているのが、県外に転職してしまうケースです。熊本県では、外国人材が新しい場所(県外)へ向かう傾向があり、永く熊本県内で働いてもらうための対策が必要です。例えば外国人も日本人と同じようにキャリアップできるような支援や職場環境の構築、地域で安心して暮らせるよう住居の確保や生活環境の整備、支援を積極的に進めていかなければなりません。
嬉しいことに日本で学びたい、働きたいという外国人材は増える傾向にあります。日本を選んで来る外国人が、高い知識と技術を習得して活躍することは、日本の良さを海外に示すことでもあります。相互理解を深め、外国人も日本人もともに輝ける社会を目指していきたいものです。



